【読書手帖】何者にもなれなかった自分を肯定できた本。

目次

二人一組になってください|木爾(キナ)チレン

スクールカースト。

ああ、この言葉を思い出すだけで女子の面倒さが良く分かる。

学校に通ったことのある女子であれば、必然的に知っている言葉だろう。
主人に聞いても知らないらしい。男子っていいな。

このスクールカーストは、無自覚の悪意なのか。
自分の地位を守るための鎧なのか。

あらすじ

「このクラスには、いじめがありました。いじめをした人間は死刑になるべきです」
女子高の卒業式直前、担任による【特別授業】が始まった。
『二人一組になってください』
二人一組になれず余った生徒は、左胸のコサージュの仕掛けにより、無残な死を遂げることにー

自分が生き残るべき存在だと疑わない一軍
虚実の友情が入り混じる二軍
教室の最下層で発言権のない三軍

声が大きいだけの者が
目鼻立ちが良い者が
そしてその人たちに好かれた者だけが
教室で息をしていられる。

そんな小学生時代を思い出し、心がこわばった。

本の舞台は高校だが、小学生も3,4年生ともなればしっかりカーストが存在した。

権力を持った女子たちの“おままごと”に付き合わされ
気に入られれば可愛がられ
反感を買えば教室で孤立する。

そんな下らないことを、どうして女子は繰り広げるのだろう。

もしかするとスクールカーストは、
無自覚の悪意ー
も、もちろんあるが
自分を守るための鎧、との位置づけた方が正しいのかもしれない。

教室は狭い。
狭いその空間が快適でないと、しんどい。
快適にするために、各々がこの空間をカスタイマイズしようとしていたのかもしれない。

男性は狩りをしなければならないから、遠くを見ておかないといけない。
足元の野イチゴに気をとられていては、狩りはできないでしょう?

と、黒川伊保子さんの本にこんなニュアンスのことが書いてあったな。

この物語に沿うならば
私はどのあたりまで生き残れるだろう。
コサージュに仕掛けられた死は、美しくないものだろうか。

インタビューを聞いて

木爾チレンさんが、この小説についてインタビューを受けている動画を拝見した。

デスゲームが好きで、イカゲームを観終わった時「デスゲームを書きたい」と思い立ち、
デスゲームなら「二人一組になってください」だと、すぐに浮かんだ。

カーストの底辺にいた自分と、一軍の子が手を繋いでくれた時、
口癖かもしれない「可愛い」を言ってくれた時、涙が出る程嬉しかった記憶が反映されている。

底辺だからこそクラスの女子のカーストの位置を俯瞰で見ることができた

小説には載せていない家族構成なども考え、一人ひとりが思い出せるように書いた

名前を考えることは、命を授ける作業

自分の中に貯まっている膿を絞り出し、底辺で悲しい思いをする子が一人でも減ればいいなと思って書いている

だからこの小説は、人物像がありありと思い浮かぶのだと知った。
あの子に似ているな、あの子のことかも、と当時の同級生の顔が次々浮かんだのも、納得がいった。

感想の締めくくりは、木爾チレンさんの旦那さまが書いた本の帯。その言葉をお借りする。

『あなたは誰が好きで、誰が嫌いですか?』

木爾チレン公式HP

BUTTER|柚木麻子

スクールカーストが終わっても、人生のステップが異なるだけでギスギスする。

私は絶対、来世は男に産まれたいー
だけど、「次も女でいいかもしれない」と思えた、そんな本。

あらすじ

男たちの財産を奪い、殺害した容疑で逮捕された梶井真奈子(カジマナ)。
若くも美しくもない彼女がなぜ――。
週刊誌記者の町田里佳は親友の伶子の助言をもとに梶井の面会を取り付ける。
欲望に忠実な梶井の言動に触れるたび、里佳の内面も外見も変貌しーー。

次も女でいいかもしれない

「次も女でもいいかも」と読み終わって一番に思ったのは、恐らくこの一文によってだ。

家事ほど、才能とエゴイズムとある種の狂気が必要な分野はないというのに。

不思議なことに、読み終えた私は泣いていた。

PMSによる情緒の不安定さからなのか
亡き父のことを思い出し寂しくなったからなのか
今の自分を肯定された気持ちになったからなのか

どれも正解で、どれも違う気もする。

他の人の感想を読んでも泣いている人は見当たらない。
深く「男だから、女だから」という基準に心酔している訳ではない。だけど

どんな境遇であれ、少しでも快適にしようとする女の知恵
自分好みに環境をカスタマイズできる女の逞しさ

この逞しさが、私にも備わっているのだと言語化してもらえて、認めてもらえた。
そのことが、今の自分に自信をくれたことが、私は嬉しかった。

そして思い出した。

ずっと女は面倒だ。来世は男がいいと思っていた。
だけど、我が子が産まれた時、私のこれまでの人生が丸ごと肯定された気持ちになったことを。

子ども達と私の後姿の写真

何者かにならなくては、とずっと頑張ってきたつもりだ。
だけど結局、何者にもなれなかった。

自分のことは嫌いではないけれど、自分の人生を初めて丸っと肯定できたのは子ども達に出会えたからだ。
この子達に出会えた自分の人生。別に何者かになれなくっても、いいんだと思えた。

そんなことを思い起こさせてくれた本となった。

インタビューを読んで

この小説について、新潮社のインタビューを拝見した。

小説に出てくる料理は全てご自身で作っているという驚き。
だからこその、目に易々とその料理が浮かび上がる。

出てくる料理が美味しそうという事も、この小説の読みごたえを増してくれている。

と、やはり私も料理についての感想を抱いたが、実はこのBUTTERがヒット作として翻訳出版されているイギリスでは感想が異なるらしい。

日本だと女性同士の絆や美味しい料理のことが取り上げられがちですが、イギリスでは“ファットフォビア(肥満恐怖症)と女性蔑視がひどい日本で書かれた、ブラックユーモアと社会風刺に満ちた話”なんですよ。

加えて、男性の生きづらさについても考えられる小説として、英語圏では捉えられるそう。

いくつかインタビューを拝見しましたが、こちらが特に面白くておすすめ。

Niewインタビュー

日本と海外で、そんなに捉え方が違うのか!という驚きと、読書についてのカジュアルさも羨ましく感じるインタビュー。小説を読み終えてからインタビューに目を通すと、2倍楽しめます。

あなたはまた、女がいいですか

二人一組になってくださいを読み終えた半年後辺りに、このBUTTERをんだ。

ジャンル分けすると、異なる所に振り分けられそうな2冊だが、BUTTERを読み終えた後すぐに「二人一組になってください」とひとまとめで感想を書きたい!と思った。

似ていないようで、似ている。

女性に対する不平等は、いったい誰によって生み出されているのか?

『家庭的な女でさえあれば、自分たちを凌駕するような能力を持たない(BUTTERより)』、と言った決めつけの偏見を抱いている男性?

何も感じないから、花が好き。その少女に、無自覚の悪を振りまき続けた女性?

あなたはまた、女に生まれたいですか?

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この記事を書いた人

睡眠時間を大切にしているアラフォーママ。
4歳差兄妹の育児と、在宅で添削の仕事をしています。

ブログでは「暮らし・私・心」を整えるための、19時半就寝スケジュールや、おうち仕事、小綺麗に年齢を重ねるための工夫など、自分らしくいられるための「心覚え」を綴っています。

完璧な毎日ではなく、軽やかな暮らしを。

毎日を頑張る同じママにとって、何かのヒントや安心に繋がれば幸いです。
どうぞ、ゆっくりとページをめくってみてください。

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